みどころ

  1. イタリア・ナポリ国立考古学博物館から《恥じらいのヴィーナス》 や《アポロとニンフへの奉納浮彫》など、30点以上が来日!
  2. 映像や模型、再現展示を通して古代ローマと日本の浴場文化を分かりやすくご紹介!
  3. 温泉や銭湯から近年脚光を浴びるサウナまで、国内のお風呂文化の歴史と地域性にも着目!
「カラカラ帝胸像」
ナポリ国立考古学博物館 212~217年
Photo © Luciano and Marco Pedicini
序章

テルマエ/
古代都市ローマと公共浴場

ローマ市で最初のテルマエは、初代皇帝アウグストゥスの右腕・アグリッパによって紀元前25年に建設されました。今も地上に遺構がよく残っているのは、カラカラ浴場(217年)と、ローマ市で最大のディオクレティアヌス浴場(302年頃)です。大規模なテルマエの運営には、水道の管理・維持に加え、大量の燃料と奴隷を必要としました。そのため古代ローマの風呂文化は、中世には消え去ってしまいました。

「カラカラ帝胸像」
ナポリ国立考古学博物館 212~217年
Photo © Luciano and Marco Pedicini

第1章

古代ローマ都市のくらし

古代ローマ人は、古くは質実剛健を旨とし、農業こそが富の正しい源であると考えていました。しかし、地中海に勢力を拡大して圧倒的な富を手に入れると、その生活も変容していきます。帝政初期には、ごく一部の特権階級と「大衆」の格差はかつてないほどに広がりました。皇帝たちは大衆の不満を解消すべく、食糧の施与や、剣闘士試合、演劇を含む見世物など娯楽の提供という施策をおこないました。テルマエも大衆からの人気獲得に大いに役立ちました。庶民たちのくらしは特別な日の見世物と、毎日の仕事の後のテルマエによって彩られていました。
  • 「炭化したパン(レプリカ)」
    ナポリ国立考古学博物館 79年
    Photo © Luciano and Marco Pedicini
  • 「悲劇の仮面を表した軒瓦(アンテフィクス)」
    ナポリ国立考古学博物館 1世紀
    Photo © Luciano and Marco Pedicini
  • 「剣闘士小像」
    ナポリ国立考古学博物館
    Photo © Luciano and Marco Pedicini
  • 「ヘタイラ(遊女)のいる饗宴」
    ナポリ国立考古学博物館 1世紀
    Photo © Luciano and Marco Pedicini
第2章

古代ローマの浴場

公共浴場のルーツには、自然の温泉のほかに、古代ギリシャの運動施設の水風呂や、医神の神域の入浴施設がありました。ですがそれを大衆の娯楽のために、驚くほどの規模へと発展させたのは古代ローマ人でした。ギリシャでは若者たちは肌に油を塗り、全裸で運動したため、運動後にはストリギリス(肌かき器)で汚れを落とし、水で身体を洗う必要がありました。ギリシャでは女性の入浴の場は自宅に限られていましたが、ローマでは女性もテルマエに通うことができました。水や湯をふんだんに使用するテルマエは、水道をはじめとする高い建築・土木技術に支えられていました。
  • 「アポロとニンフへの奉納浮彫」
    ナポリ国立考古学博物館 2世紀 
    Photo © Luciano and Marco Pedicini
  • 「ストリギリス(肌かき器)」
    ポーラ文化研究所 前3~前1世紀
  • 「銅製把手付ガラス壺」
    MIHO MUSEUM 
    3-4世紀
  • 「ゴールドバンド装飾瓶」
    平山郁夫シルクロード美術館 
    1世紀
  • 「金製指輪」
    国立西洋美術館 1-2世紀
    © 上野則宏
  • 「ライオン頭部形の吐水口」
    ナポリ国立考古学博物館 1世紀
    Photo © Luciano and Marco Pedicini
第3章

テルマエと美術

テルマエは、大衆が美術品を間近に見ることができる場でもありました。床には水に強いモザイクが敷かれ、1〜2世紀には白黒モザイク、それ以降は多彩モザイクが好まれました。 ローマの大規模なテルマエには数多くの大理石彫刻も飾られました。皇帝や浴場の建設者の肖像のほかに、神々の像や古代ギリシャの有名作品のコピーが、壁面のニッチや円柱の間の台座の上に並びました。浴場のルーツのひとつであるギュムナシウム(運動施設)にちなんだアスリート像や、それを守護するヘラクレスの彫像など、浴場にふさわしい主題が選択されました。
  • 「恥じらいのヴィーナス」
    ナポリ国立考古学博物館 1世紀
    Photo © Luciano and Marco Pedicini
  • 「ヘラクレス小像」
    MIHO MUSEUM 前1~後2世紀
  • 「海から上がるヴィーナス」
    ナポリ国立考古学博物館 1世紀
    Photo © Luciano and Marco Pedicini
  • 「牧神頭部」
    石橋財団アーティゾン美術館 
    1世紀
歌川国貞(三代歌川豊国)「江戸名所百人美女 御殿山」
ポーラ文化研究所
第4章

日本の入浴文化

本展の最後の章では、国内に残される地方色豊かな温泉文化にも触れながら、日本のお風呂の歴史を概観します。日本において入浴の習慣が定着したのは江戸時代、家庭内の風呂が当たり前になった現在でも、東京だけで約700軒もの公衆浴場が存在しています。温泉地へ旅することや近年のサウナブームも、日本人がお風呂好きな民族であることに起因するのでしょう。『テルマエ・ロマエ』の主人公・ルシウスが、浴場を通して日本とローマを往復したように、古代ローマと日本のそれぞれの入浴文化を体感ください。
※会期中、一部の作品に展示替えがあります。

歌川国貞(三代歌川豊国)「江戸名所百人美女 御殿山」
ポーラ文化研究所 安政5年(1858)

  • 落合芳幾「時世粧年中行事之内 競細腰雪柳風呂」
    神戸市立博物館 明治元年(1868) ※山梨、神戸会場で展示
  • 三浦 宏「湯屋 模型」
    個人蔵 1980年代
  • 式亭三馬「浮世風呂」
    京都府立京都学・歴彩館 文政3年(1820)
  • 町田忍「明神湯」
    制作:山本高樹、内部絵:町田忍 平成20年(2008)
(上部の画像左)《恥じらいのヴィーナス(ウェヌス・プディカ)》ナポリ国立考古学博物館蔵 Photo © Luciano and Marco Pedicini、(右)《湯屋模型》個人蔵
(上部の画像)《恥じらいのヴィーナス(ウェヌス・プディカ)》ナポリ国立考古学博物館蔵 Photo © Luciano and Marco Pedicini
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